初回はまず本が出来上がるまでの流れと,出来上がった本が読者の手に届くまでの流れを,原則的にざっと。
(いわゆる業界用語や工程には出版社によっての異同がありますが,大きな相違ではありません。また印刷所や製本所における工程は省略してあります。)
企画・編集会議
↓
著者選定
(編集プロダクションなどからの企画の提示,著者自身からの持ち込み原稿などもある)
↓
執筆依頼
↓
原稿入手
↓
原稿整理:本文・図表などの点検をしたのち,印刷所に向けて組版(くみはん)のための指定*,用字・用語のチェック,内容のチェック,誤字脱字・「てにをは」の訂正を,ふつう赤ボールペン,赤サインペンなどで行います。それを「赤字」といいます。著者への質問出しもこの段階でまず行います。
この工程は編集者の力量が問われるところでもあります。
(*「組版のための指定」とは,本文の文字の大きさや書体,見出しの文字の大きさや書体,1ページの行数,図表を組み込むためのスペースの取り方,図のキャプションの入れ方,ページ番号の入れ方などなどを指定することです。これにより本全体の体裁を整えます。)
↓
レイアウト:割付け。文章・写真・図・表などを各ページごとに配置していく。割付け用紙といわれる所定の用紙に鉛筆と定規で,1ページごとに文章や図表の配置を描く。
↓
入稿(にゅうこう):印刷所に「赤字」のはいった原稿と「割付けをした」割付け用紙とを渡す。
↓
印刷所では組版のオペレーターにより,「赤字」の訂正がなされ,組版の指定と割付け用紙に従って1ページずつ組み上げられていきます。今日のDTP(desktop publishing;パソコンによる出版)では,レイアウトのためのアプリケーションソフト(たとえばInDesignなど)でこの作業を行います。
↓
初校(しょこう):割付け用紙に従って組み上げられたものがプリントされたもので,それを「初校紙(しょこうし)といいます。「原稿整理」の赤字どおりに訂正がなされているか,指定どおりに表現されているか,「レイアウト」どおりに文章・図表が配置されているか,文字・文章が正しく出力されているかなどを,入稿された原稿・レイアウトと逐一照合します。そのあと全体を通して読みます。これを「素読み(すよみ)」といいます。原稿を読むときとは異なった視線で読まなければなりません(このあたりのことについては,おいおい綴っていきます)。これを「校正(こうせい)」するといいます。原則として編集部で行います。
↓
著者(執筆者)校正:少し省略して「著者校」ともいいます。文字通り著者が著者の立場から校正するものです。ここで多少にかかわらず訂正がはいるものです。著者によっては大幅な訂正がはいります。襟を正して執筆した原稿は訂正が少ないようです。
このあたりの事情もまた後日綴りましょう。
↓
初校返し:初校や著者校での訂正を記入した初校紙を印刷所に返します。
↓
再校(さいこう):初校や著者校正でなされた訂正が修正されたものが出力されます。これを「再校紙(さいこうし)」といいます。この再校紙を初校紙と照合し,訂正が正しくなされているか点検します。そのあとふたたび全体を通して読みます。初校での素読みとはまた違った視点から読みます。
↓
再校返し
↓
三校(さんこう):初校→再校と同じような工程が繰り返されます。3度目の校正です。
このあと本の種類によっては,たとえば辞書などでは何十校と校正が繰り返されます。
↓
校了(こうりょう):校正を終了します。
↓
(青焼き・藍焼き/白焼き校正)
↓
(検版)
↓
印刷
↓
製本
↓
本の出来上がり
↓
取次店:本の問屋です。
↓
小売店:大型書店を含めた街の書店です。
↓
読 者
と,ざっと以上のような流れになっています。出版社〔版元(はんもと)ともいいます〕によって流れの細部は異なりますが,一般にはおおよそこんなものです。
流通上「取次店」を経ない出版社もあります。また出版社から直接読者のもとに届けられる直販もあります。
コメント