書籍案内

実験デザインの原理に始まり,動物から臨床までの広範な分野にわたる魅力的な事例が,実験デザイン→実施→結果→論文というラインで一貫して具体的に解説されている。
改訂 心理学実験計画入門

改訂 心理学実験計画入門

監訳者のことば

心理学の初心者に実験計画の基本を教える入門書は,残念ながら邦書では見つけ難いと云っていいと思います。アメリカでしたら,「実験心理学」とか,「心理学研究法」といった表題の本の中にその種の本を見つけることも不可能ではないでしょう。しかしながら,心理学の実験計画の基本的原理をただ抽象的に述べるだけでなく,この入門書のように実験の具体例によって,実際に実験を計画する際,何を注意すべきか,何に誤り易いかを気づかせるといったことをきめ細かい配慮で述べ,研究事例によって実験を分析的に検討することにまで及んでいる本は珍しいのではないでしょうか。私はこの本の初版の頃から,担当していた「心理学的測定法」の授業の中で,主として実験の統制についての部分を利用してきました。したがって,この本が翻訳によって,心理学の初心者はもちろん,さらに多くの人々の目に触れる機会が増すことになれば大変よいのだがと,かねて思っておりました。
…中略…
これまで使ってきて,この本が心理学の実験計画の入門書というばかりでなく,物事を正しく科学的に考察するに際しての基本を伝える大変に有用な本であると確信するに至っております。したがって心理学にとどまらず,広く科学的なアプローチに関与する多くの方々の座右の書となることを期待しております。


目次

第1部 実験計画の基礎原理

 第1章 科学的探求への序言
  1.科学とはなにか
  2.なぜ科学としての心理学なのか
  3.「科学的な方法」について
  4.科学的方法論
  5.実験心理学における思考と仮説の展開
  6.定義事項
 第2章 実験計画の分析:計画の方略
  1.実験計画の論理
  2.独立変数と従属変数
  3.実験群と統制群
  4.データ報告:曲線,図,関数
  5.棒グラフ
  6.要因計画
  7.相関的研究
  8.準実験計画
  9.関数的計画
  10.付加的要件
  11.定義事項
 第3章 実験計画の分析:統制
  1.統制された対比
  2.科学的推論
  3.統制の型
  4.統制と実験範例
   モデル1:独立被験者計画/モデル2:被験者釣合せ計画/モデル3:反復測定計画
   /モデル4:反復測定計画/モデル5:要因計画
  5.処理群と統制群の使用
  6.統制の問題:睡眠学習
  7.統制の問題:社会的剥奪と社会的強化
  8.統制の問題:知覚的防衛
  9.統制の問題:一試行学習
  10.要  約
  11.定義事項
 第4章 実験計画批判:Ⅰ
  練  習
  実験の要約
 第5章 被験者変数の統制
  1.処理群における被験者の等質性
  2.無作為群計画:モデル1
  3.被験者釣合せ計画:モデル2
  4.被験者内計画:モデル3
  5.反復測定計画――順序を均衡化したもの:モデル4
  6.被験者の脱落(自然減)
  7.定義事項
 第6章 実験計画批判:Ⅱ
  1.実験の要約
  2.練習問題
 第7章 実験研究の倫理
  心理学者の倫理原則
  前文/第1原則:責任/第2原則:能力/第3原則:道徳的・法的規準/第4原則:
  公的発言/第5原則:秘密保持/第6原則:対象者の福祉/第7原則:専門職業上の
  関係/第8原則:アセスメント技法/第9原則:人間を対象とする研究/第10原則:
  動物の保護と使用
 第8章 心理学の文献:理解し研究の発想を得るために読む
  発想,ひらめき,心理学の文献
  電子図書館
 第9章 研究の実施と研究論文の作成
  研究の実施
  研究論文の作成
  論文の体裁

第2部 実験の分析
 第10章 コーラの味
  特 論 統制の問題――対間の関係/順序効果/刺激の蓄積/視覚的手がかり/温度
      /当て推量/被験体変数
  コーラ飲料の識別
   分  析
   問  題
 第11章 絵の記憶
  絵についての理解と記憶
  分  析
  問  題
 第12章 距離と階級
  特論1 現場に基づく研究
  特論2 目立たない測定
   軍隊で階級の同じ者とそうでない者との間でとられる最初の相互作用距離
  分  析
  問  題
 第13章 長期記憶
  「はにかみや」は損をするのか? 7人の小人と長期記憶追加問題
 第14章 創造的なネズミイルカ
  特 論 標本数の少ない計画
  創造的なネズミイルカ:新しい行動の訓練
  分  析
  問  題
 第15章 母性行動
  特 論 心理学研究における動物の使用
  母親の血漿注入により誘発される処女ラットの母性行動
  分  析
  問  題
 第16章 ユーモア
  特 論 帰属理論
  帰属の指標としてのユーモア
  分  析
  問  題
 第17章 アルコールと知覚
  アルコールと運動知覚
  追加問題
 第18章 ロシア語の語彙
  特 論 実際的な問題と理論的な問題
  ロシア語の語彙の獲得への記憶キーワード法の応用
  分  析
  問  題
 第19章 怒りに対する心理療法
  特 論 臨床的研究での1被験者計画
  ストレス免疫療法:怒りに対する認知療法とうつ病の事例への応用
  分  析
  問  題
 第20章 オフィス環境
  オフィス環境の活動の分析:現実と好み
  分  析
  問  題
 第21章 向社会的行動
  子供の援助行動に及ぼすテレビの向社会的範例の効果
  追加質問
 第22章 さえずりの学習
  特 論 多重実験
  さえずりの学習と相互感覚処理
  分  析
  問  題
 第23章 ノートをとること
  特 論 被験者変数
  ノートをとることと復習が再生に及ぼす効果
  分  析
  問  題
 第24章 減  量
  特 論 臨床心理学における研究
  減量に対する自己報酬,自己罰,自己監視の相対的有効性
  分  析
  問  題
 第25章 親の見る目
  人の見る目:新生児の性別についての親の見方
  追加問題

付録A 基礎統計の計算手続き
付録B 統計数値表